言い間違えが呼んだ奇跡。不思議な再会のお話し。

日常の些末な出来事
てるこま
てるこま

突然ですが、『運命の再会』ってあると思いますか?

映画やドラマでは定番の演出ですが、ドラマチックな再会はフィクションの世界だけ。そう思っている自分がいることも確かです。

でも、実は私。とても印象的な再会をしたことがあるのです。今回は、私とある女性との再会について書きたいと思います。

※てるこまという名前ですが、この四文字がフルネームであり、名字であり、名前でもあります。旧姓も現姓も自在に対応できるのが、『てるこま』です。そこを加味して、本稿をご覧くださいませ。

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『彼女』との出会いは初めての入院中でした

彼女との出会いは、長男妊娠中の頃。入院先の心理士さんをきっかけに知り合いました。先に断っておきますが、本稿の彼女とは心理士さんのことではありません。

おいぬさん
おいぬさん

入院中、寝ても覚めても泣いてたんだよな。

てるこま
てるこま

えへへ。心理士さんとの面談は心の支えだったよ。

ストレスを吐き出す方に爽快感はあっても、聞き続けることは誰しも辛いもの。延々と続く愚痴に、聴覚の電源をOFFした経験をお持ちの方も少なからずいらっしゃるかと存じます。私もそうです。

しかし心理士さんは、いつだって私の話しに頷き、決して否定はせずに励ましの言葉をかけてくれます。お仕事とはいえ、フリではなく、メモを取りながら真剣に聞いてくれるのです。

その日も私は、大きなことから小さなことも言葉にして吐き出しました。そうしてひと通り話しを聞いた心理士さんは言ってくださいました。

心理士さん
心理士さん

初めての妊娠で不安ですね。でも本当に頑張っていますよ、にこたまさん。

にこたまさん?いやいや。私の効き間違いかもしれません。泣いて耳がツーンとしていましたし。心理士さんは、私の顔を見ながら再び話し始めました。

心理士さん
心理士さん

もしも、にこたまさんの思うような結果にならなかったとしても、それはにこたまさんが悪いということではありませんよ。

少し混乱しました。

おいぬさん
おいぬさん

名字が絶妙に間違っている。

てるこま
てるこま

うん。呼び間違えていたの。

心理士さんは、前回までの面談のノートを確認しながらお話ししています。ということは、他の誰かと間違えているわけではなさそうです。つまり、純粋に呼び間違えている様子。

でも言えない。私、にこたまじゃなくて、てるこまなんだよって言えない。だってこんなに真剣に話を聞いてくれているのに。ノートにびっしりとメモを取っているのに。

呼び間違えを指摘したら、心理士さんはきっと謝るでしょう。そんな姿は見たくありません。名字の多少の差異などどうでも良いではありませんか。私はその呼び間違いには気付かなかったことにしました。

心理士さんは翌週も来てくれました。そして変わらず、私をにこたまさんとして励ましてくれます。しっかりと噛み合う会話。どうやら私は、一週間の熟成期間を経て、にこたまとして定着してしまったようでした。

もちろん、一人称を名字にするという案も浮上しました。そうすればごく自然に本名をアピールできます。しかしそれは、かつてのモー娘。メンバーならではの作法。うたばんのセットどころか病院のベッドに横たわる非アイドルの私が「てるこまはですねぇーっ。」と話し出すことは、許される行為ではありません。

退路は断たれた、そう感じました。つまり、本稿における『ある女性』とは、にこたまさんのこと。訂正する度胸が無く、私が演じざるを得なくなった架空の女性のことなのです。

おいぬさん
おいぬさん

てるこまは、にこたまにしてにこたまにあらずってことか。ややこしいな。

てるこま
てるこま

ややこしくしてごめんなさい…

トラブル防止のためにも、今ならさっさと言えたと思います。でもその時は、ズタボロに弱った妊婦メンタル。誰かに訂正を入れて謝られるというシチュエーションがたまらなく怖かったのです。

その後2割くらいは正しく呼ばれることがありつつも、心理士さんとは概ねにこたまとして呼ばれていました。一瞬の勇気を振り絞ることができなかった私。なんと、心理士さんとにこたまとしての私の時間は、年を跨いで退院まで続いてしまったのです。

2度目の入院。まさかの再会がありました

謎ににこたまさんに扮したあの入院から約2年。私は再び病院のベッドに居りました。はい、次男妊娠中につき切迫早産で再び入院していたのです。

てるこま
てるこま

もう。私はそういう人なの。

しかし、そこは2回目。入院生活も堂に入ったものです。自らに課した厳しいノルマ、トリックシリーズ全制覇のためにAmazonプライムビデオのアプリを開いた時でした。あの慣れ親しんだ名前を再び耳にしたのは。

看護師さん
看護師さん

にこたまさーん

てるこま
てるこま

あの…てるこまですが。

看護師さん
看護師さん

ごめんなさーい、間違えちゃった。てるこまさんの検温にきたんです。なんか似てますよねー。間違えられることってありますか?

てるこま
てるこま

時々。(困った顔の愛想笑い)

あの心理士さん以外に、私をにこたまさんと呼んだ人は初めてでした。

おいぬさん
おいぬさん

夫くんは、にこたまさんの名字に間違えられることはあるの?

てるこま
てるこま

それが、今まで一度もないんだって。

『てるこま』と『にこたま』はもちろんブログ上の仮称です。実名同士も同グループのような名字であり、間違えるような名字では無いのです。

難しいですが、例えるなら『伊集院さんと西園寺さん』の距離感でしょうか。『綾小路さんと白鳥さん』の方がわかりやすいかしら。ともかく『荻原さんと萩原さん』のような識別困難な名字ではありません。

産まれてこの方、一貫してこの名字を名乗っている夫。彼でさえ間違えられたことがないのに、なぜ私は間違えられるのか。きっと私は『にこたま顔なんだ』ということで落ち着くことにしました。

しかし数日後、事態は急変します。

その時は朝食のタイミングでした。いつも部屋単位で配膳される食事が私のところだけ早く届いたのです。スタッフさんが「にこたまさーん、お食事です」とトレーを届けてくれます。そんなににこたま顔かなぁと思いつつ、習慣としてトレイに置いてある名札に目をやると『にこたま様』という記載が。

おいぬさん
おいぬさん

ちょっと待って!にこたまさんって実在しているってこと?

てるこま
てるこま

その通り。にこたまさん、本当にいたんです。

ありえない再会はこんな事情だった!

事の次第はこういうこと。

当時、にこたまさんという女性が本当に入院していたのです。それも、私が入院している大部屋の隣に入院していました。産院なのでもちろん彼女も妊娠中。更に驚くことには、ベッドの位置が私と彼女で全く同じだということもわかりました。

おいぬさん
おいぬさん

それってつまり。

同時期に、隣り合う部屋同士・同じ配置のベッドに、同じく双方妊娠中のにこたまさんとてるこまが入院してたってこと?

てるこま
てるこま

そうなの!

もちろん、朝食は手を付ける前に回収してもらいました。この日だけ早く配膳されたのは、にこたまさんが何か検査を控えていたのかもしれません。

少し後に知ったのですが、スタッフの皆さんは私とにこたまさんを間違えないように特に注意を払っていたそうです。短期間で数度の呼び間違いがあったことから事情を説明され、私のベッドの位置を移してもらうことに。その後も、様々なシーンで氏名や患者番号を確認するようになりました。

にこたまさんへの感謝と思い

もちろん、2年前のにこたまさんとは全くの別人です。むしろ、長男妊娠中のにこたまさんは半ば私の妄想のようなもの。もしもあの時も本当ににこたまさんという女性が入院していたとしても、長男と次男の時では病院同士の距離がかなりあるので、同一人物である可能性は低いでしょう。

しかし、ある種の『再会』を感じている自分がいました。自分がひっそりと演じていた人が本当に現れたなんて。

おいぬさん
おいぬさん

で、実際のにこたまさんってどんな人だったの?

てるこま
てるこま

それが…会わなかったんだ。

考えてみてください。普通に考えたら、『間違えられるけど、似てる名字だら仕方ないな』くらいの出来事です。

にこたまさんの身になってみましょう。入院中に知らない妊婦が自分を訪ねて来る。何事かと思いますよ。しかもその女が『実は私、2年前にあなたと同じ名字のフリをしていたんです。今回こうして同じ病院に入院しているなんて、キセキ、感じてます☆』とか言い出したら、恐怖以外の何と言いましょうか。即ナースコールですよ。貴重な頸管様がどうなることかわかったものじゃありません。

確かに声をかけてみたい気はしましたが、再会や奇跡を感じたのは私のかなり特殊な思い出によるものであり、恐らく事情を伝えても『…ソッカ。ウン。』となるだけ。不要不急の打ち明け話は、控えるに越したことはないのです。

産院ですから、入院中は沢山の妊婦さんと廊下ですれ違いました。私とにこたまさんもすれ違ったり、知らないうちに近くにいたこともあるかもしれません。にこたまさんも『てるこま』と呼び間違えたこともあったのでしょうか。

実際にお会いした訳ではないので、再会とは言えないかもしれません。でも息子たちそれぞれの妊娠中に限って、こうまで印象的な呼び間違えを経験すると、不思議な巡り合わせを感じずにはいられないのでした。

私はまた、にこたまさんに呼び間違えられる時がくるのでしょうか。その時も人生のターニングポイントを迎えているのかもなぁなんて、少し楽しみにしている自分がいます。

※医療機関に関わらず、氏名の呼び間違えは速やかに指摘しましょう。思わぬトラブル・事故に繋がる可能性があります。今は私もそうしています。